欧州におけるソーシャル・ファイナンス
-市場の発展のためのレシピから学ぶ-

野村資本市場研究所 小立 敬

要約

  1. 欧州では、グローバル金融危機以降、社会的企業(social enterprise)が重要な役割を担うようになってきている。社会的企業の拡大に伴って社会的企業に資金や資本を提供するソーシャル・ファイナンス市場も拡大しており、今後、さらなる発展が期待されている。
  2. 欧州のソーシャル・ファイナンス市場では、ソーシャル・バンクやソーシャル・ベンチャーキャピタル、クラウドファンディング、インキュベーター、アクセラレーター、マッチメーカーといった多様なプレーヤーが参加するようになってきた。もっとも、社会的企業の支援やファイナンスの需要と供給をマッチングさせる機能が不足するなど今後の発展に向けた課題も抱えている。
  3. 欧州委員会は、ソーシャル・ファイナンスの商品や市場を発展させるイニシアティブの設計のため、「ソーシャル・ファイナンスのレシピ」と題するガイダンスを策定している。当該レシピは、ソーシャル・ファイナンスの発展のために投資家がどのようなことを検討すべきか、社会的企業にどのような能力開発の支援を提供すべきか、といったことを含めて幅広く論点の整理を行っており、欧州におけるソーシャル・ファイナンスの発展を企図している。
  4. 欧州の社会・経済システムは現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響を受けている。COVID-19によって生じた問題に対処するべくソーシャル・セクターの役割への期待が高まっており、それに伴ってソーシャル・ファイナンスに今後さらなる注目が集まることが見込まれる。ウィズコロナあるいはアフターコロナの時代には、欧州に限らず、日本を含む世界各地においてソーシャル・セクターを支えるソーシャル・ファイナンスへの期待が高まるように思われる。欧州の取組みに学ぶことは多い。
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