自然資本関連リスク等の情報開示整備に向けたTNFDの正式発足
-TCFDの自然資本版-

野村資本市場研究所 林 宏美

要約

  1. 2021年6月4日、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の自然資本版に相当する「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が正式に発足した。TNFD は、グローバルな資金の流れを、自然資本にマイナスの影響を及ぼす「ネイチャー・ネガティブ」からプラスの影響を及ぼす「ネイチャー・ポジティブ」にシフトさせるべく、増大する自然関連のリスク及び機会についての情報開示枠組みの策定を目指す。G7財務相・中央銀行総裁会議が翌6月5日に公表した共同声明(コミュニケ)には、TNFDの発足を歓迎する旨が早速盛り込まれた。
  2. TNFDでは、2020年9月に設立された非公式作業部会(IWG)による議論の集大成として纏められた「Nature in Scope」と題した報告書やTCFD等を基に検討を進め、2023年に最終的な枠組みの公表を目指している。TNFDの共同議長には、ロンドン証券取引所グループ傘下のリフィニティブ創設者であるデイビッド・クレイグ氏、国連生物多様性条約事務局長のエリザベス・マルマ・ムレア氏が就任した。
  3. 2021年10月に予定されている中国昆明での生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議において、愛知目標の次の世界目標が設定される見通しである。国際連合主導による自然資本や生物多様性の保全を目指す動きが活発化するなかで、TNFDの枠組み導入を目指す動きは、ネイチャー・ポジティブへの流れを後押しする可能性がある。
  4. 自然資本関連データの不足が指摘される中で、TNFDによる開示の意義を高めるには、一貫性があり、比較可能かつ実態に即したデータをどの程度開示できるかにかかっている。
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