マルチアセットを対象としたESGFスコアの開発と検証
野村アセットマネジメント 江口 朋宏、田村 彩香
要約
- 環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組みへの関心が高まる中、ESGなどの非財務情報が金融資産のパフォーマンスに与える影響への注目が高まっている。最近では、公的・民間を問わず、さまざまな機関がESGデータを公開しており、より広範かつ透明性の高いデータを用いて分析を行うことが可能になった。
- そこで、財務情報としての財政スコアに加え、非財務情報としてESGのソブリンスコアを開発した。ソブリンスコアによって、対象国の状況を統一的かつ透明な基準によって比較することができる。
- さらに、ソブリンスコアを活用したマルチアセット運用への応用も検討した。ソブリンスコアを用いて推定されるファクターリターンは、各国のリターンに対して統計的に有意な水準で影響を及ぼすことが示された。
- ソブリンスコアを用いて、各資産内でカントリーアロケーションを行ったところ、リスク調整後リターンが改善する傾向が見られた。また、スコアの設計上、こうした投資は社会的役割(インパクト)も同時に果たしている。これらの結果は、ESGなどの非財務情報を投資判断に取り入れることで、長期的に優れた運用成果を実現できる可能性を示唆している。