ESG投資の拡大と市場参加者に求められるESG評価の理解
-ESG評価の特徴と評価間のばらつきの事例-

野村資本市場研究所 富永 健司

要約

  1. 世界で環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の拡大が続き、企業のESGに係る取り組みを示すESG評価の活用が広がっている。ESG投資を行う上で投資家が直面する問題として、従来からESG評価機関による評価間のばらつきが指摘されていたが、こうした状況は依然として継続している。
  2. 代表的なESG評価機関であるブルームバーグ、S&Pグローバル、サステイナリティクスによるESG評価手法を比較すると、(1)業種固有の評価項目の設定、(2)評価項目の内容、(3)ESG分野別の評価項目、(4)評価の観点、(5)業種・個別企業に係る調整、等の観点から違いが見られる。こうした評価手法の多様性はESG評価間のばらつきにつながっている可能性がある。
  3. ESG評価間にばらつきが見られる状況に対して、投資家は、評価の利用者としての立場からESG評価機関の評価手法の改善に向けた取り組みを促す一方で、ESG評価機関の多様な視点には価値があるとの見方も示している。
  4. 市場参加者によるESG評価に対する理解が深まることで、投資家がESG評価を活用しESGに係る選好を投資判断に反映させやすくなることが見込まれる。ESG評価の適切な活用が進むことで、ESG要素を財務分析に体系的に組み込むESGインテグレーション及びESG評価の水準に応じて銘柄選別を行うポジティブスクリーニング等の投資戦略の拡大を通じたESG投資の量的・質的な発展が期待されよう。
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