存在感を増すESG評価・データと規制当局の関与の検討
-信用格付けの歴史から得た教訓-

野村資本市場研究所 江夏 あかね

要約

  1. サステナブルファイナンス関連市場でESG評価・データの存在感が大きくなるにつれ、信用格付けの分野においても長らく議論されてきたように、質や透明性を確保すべく、規制当局による適切な関与の検討を求める声が国際的な組織や各国の当局から上がっている。
  2. 本稿では、主な見解として、(1)証券監督者国際機構(IOSCO)、(2)経済協力開発機構(OECD)、(3)欧州連合(EU)、(4)フランス金融市場庁(AMF)とオランダ金融市場庁(AFM)、(5)英国金融行為規制機構(FCA)、(6)日本の金融庁、(7)中国、(8)米国証券取引委員会(SEC)、を取り上げた。多くの主体は、ESG評価・データ及び提供機関を中心に検討を進めている一方、グリーンボンドの評価・認証に焦点を当てているケースもある。
  3. 各主体がESG評価・データ及び提供機関に関して認識している主な課題では、(1)共通定義の不存在、(2)手法の透明性の欠如、(3)情報提供の適時性・正確性・信頼性の不十分さ、(4)利益相反への懸念、が共通している。
  4. 今後もESG評価・データに対する当局による適切な関与に関する検討は続くとみられる。その際、(1)信用格付けの歴史から得た教訓を検討に活かす、(2)共通認識・定義の形成、(3)ESG評価・データ関連の商品・サービスの特性を踏まえたきめ細かな対応、(4)当局による関与手法の複数の選択肢、(5)ESG評価の有効性の検証、(6)利用者によるESG評価・データの適切な利用の促進、といった論点を念頭に、検討が進められることが望まれる。
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