ESG要素が企業業績や株価等に与える影響
-ESGパフォーマンスをめぐる先行研究のレビュー-

野村資本市場研究所 林 宏美、加藤 貴大

要約

  1. 企業による環境・社会・ガバナンス(ESG)課題への取り組みがますます求められる潮流の中で、ESG要素が企業業績や株価等に与える影響について、ESG関連の主要な先行研究を集めて体系立てて整理した3本のサーベイ論文を中心に分析すると、ESG要素と企業業績等との間にはプラスの相関関係があると結論づける研究論文が主流であることが明らかとなった。
  2. 本稿でレビュー対象とした論文を踏まえると、以下の注目点を見出すことができる。第一に、企業が財務パフォーマンス向上を目指すには、当該企業が属するセクターや本業にとってマテリアルな(重要な)個別サステナビリティファクターのパフォーマンス向上が重要である点が挙げられる。第二に、ESG課題への取り組みは、金融危機や経済危機下において、企業業績の下方リスクを抑制する効果を期待できる点である。第三に、サステナビリティ指数の構成銘柄に含まれることが株価パフォーマンスの向上に繋がる点がある。
  3. もっとも、ESG関連課題の重要度合が時間の経過と共に大幅に変化することもあり得る特質に鑑みると、過去のデータを用いて将来のパフォーマンスを分析する限界等にも留意する必要はある。
  4. これまで蓄積されてきた、ESG要素と企業業績等との関係に焦点を当てた論文の研究結果に加えて、今後サステナビリティ関連の開示基準を統一化する動きが進展すれば、信頼性の高い研究論文の蓄積がさらに進展し、企業や投資家等によるESGをめぐる効果的な取り組みが増える好循環が期待されよう。
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