EU グリーンボンド基準(EU GBS)の規則案の公表と今後の論点
-EU タクソノミーとの整合性と外部評価の厳格化がカギに-

野村資本市場研究所 江夏 あかね、富永 健司

要約

  1. 欧州委員会は2021年7月、欧州連合(EU)のグリーンボンド基準(EU GBS)を創設するための規則案(EU GBS規則案)を採択した。EU GBS規則案は、これまで欧州委員会で検討されてきた内容が概ね反映されていると解釈され、世界の金融市場で最も浸透しているとみられる国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)に類似している点が多い一方、全般的により厳格な内容となっている。
  2. EU GBS規則案の主な特徴としては、(1)包括的な発行体の対象範囲、(2)任意の基準、(3)環境面でサステナブルな経済活動を分類する EU タクソノミーとの整合性等、(4)外部評価に関する厳格化、(5)各種レポーティングを通じた透明性の確保、が挙げられる。
  3. 今後のEU GBSをめぐる主な論点としては、(1)発行体によるEU GBSの活用度合いや方法、(2)EU GBSによる環境的課題解決への寄与度、(3)外部評価に関する規制・監督の流れ、が挙げられる。特に、EU GBS は、発行体にとってより厳格な基準に沿ったグリーンボンドを発行できる選択肢となり得るため、発行体が自らの環境関連の取り組みへのコミットメントや実効性を投資家に示し、他の銘柄と差別化すべくEU GBSに準拠したグリーンボンドの発行を選択する動きが顕在化する可能性がある。
  4. グリーンボンド市場で存在感があるEUによるグリーンボンド基準策定の動きは、世界のグリーンボンド市場の今後の発展に影響を及ぼす可能性もある。そのため、金融市場参加者の見方や、政策としての実効性等も含めて目が離せない状況が続くと想定される。
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