人的資本の報告ガイドライン国際規格ISO30414
-注目度高まる人的資本の情報開示-

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 非財務情報の一つとして人的資本への関心が高まる中、2018年に国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)が作成したISO30414(ヒューマンリソースマネジメント-内部及び外部人的資本報告の指針)は、人的資本に関する情報開示の国際規格として注目される。
  2. ISO30414は、人的資本の情報に関し、コンプライアンスや多様性など11の報告領域について、一貫性のある58の測定基準指標で可視化し、社内外のステークホルダーに向け報告するための国際規格である。ただし、その内容への完全な準拠が要請されるわけではなく、各企業の状況により、利用する指標や開示内容の工夫も可能である。
  3. ISO30414はマネジメントシステム規格の一つであるが、ガイドラインであり、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)のような認証は求められない。しかし、ドイツ銀行が2021年3月に発行した人的資本に関する報告書「Human Resources Report 2020」で認証を取得するなどの動きも見られる。
  4. 人的資本に関する情報開示においては、米国証券取引委員会(SEC)が2020年8月に開示をルール化し、現在は法制化に向けた動きも進められている。さらに、日本でも2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて人的資本に関する情報開示が盛り込まれるなど、その要請は強まっている。
  5. ISO30414の利用は、その内容を単に開示することに留めるべきではない。「可視化」、「比較可能性」という特徴を生かしつつ、人的資本に関する情報開示の重要性を改めて認識し、各企業が人材をどのように生かして企業価値を高めるかという観点から「人材戦略」を経営戦略の中に明確に位置づけるなど、これを「活用」していくことが重要と考えられる。
Nomuraレポートダウンロード
サステナビリティについてのお問い合わせ
メディアギャラリー