2021年6月株主総会と議決権行使
-コロナ対応、環境関連の株主提案への対応に特色が見られた-

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2021年6月株主総会では、取締役選任議案で否決事例なども見られたが、主要議案では賛成率が上昇しているものも多く、全体としてはあまり波乱は見られなかった。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、機関投資家のスタンスは基本昨年と変わらず「緩和的」であったが、手元現預金の水準に関する基準では通常の見方を採る機関投資家も出るなど、対応に変化が見られた。
  2. 環境関連の株主提案数は2020年6月株主総会時より増加した一方、賛成率は昨年を下回った。これは、会社側の環境関連への取り組みや開示の姿勢に対し一定の評価を行う一方、株主提案が求める定款変更の必要はないと考えた株主が多かったためと考えられる。
  3. 個人投資家の議決権行使動向をアンケート調査から見ると、議決権行使割合は上昇傾向にある一方、株主総会の全議案に賛成した個人投資家も増えていた。この結果からは、基本的に個人投資家は保有先企業に対するロイヤルティ(愛着)が高いと見られる。安定株主が減少する中、株主総会で賛否が拮抗する場面では個人株主の動向が鍵を握る局面もあり、普段から彼らに対し会社側の考えや姿勢を明確に示すことは重要である。
  4. 議決権行使における2022年以降の注目点は、(1)コーポレートガバナンス・コード改訂や東証市場改革への対応(社外取締役の増員等)、(2)環境関連での開示要請や議決権行使基準への取入れ、(3)政策保有株式の議決権行使への取入れ、(4)形式的ではない「実質」的な判断や評価の議決権行使(基準)への反映、などがある。また、環境関連においては国際的なイニシアティブに対する企業の対応への評価が今後の課題であろう。
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