グリーンファイナンスの促進に向けたASEANの取り組み
-ASEANタクソノミーの導入を中心に-

北野 陽平

要約

  1. 東南アジア諸国連合(ASEAN)では近年、グリーンファイナンスの促進に向けたさまざまな取り組みが進められているが、足元では、2021年11月に「サステナブルファイナンスのためのASEANタクソノミー」(以下、ASEANタクソノミー)の初版が発行されたことが注目される。ASEANタクソノミーは、持続可能な経済活動を分類するためのASEAN独自の基準であり、初版では環境に焦点を当てている。
  2. ASEANタクソノミーは、欧州連合(EU)が定めたEUタクソノミー等の国際的に認知されたタクソノミーを参考にして策定された。ASEANタクソノミーの環境目的として、(1)気候変動の緩和、(2)気候変動への緩和、(3)健全な生態系及び生物多様性の保護、(4)資源の強靭性及びサーキュラーエコノミーへの移行の促進が挙げられており、EUタクソノミーの環境目的と概ね整合的である。
  3. ASEANタクソノミーでは、各国の多様性が考慮され、経済活動を分類する上で基本フレームワーク(Foundation Framework)とプラス・スタンダード(Plus Standard)という2つのアプローチが採用されている。基本フレームワークでは全セクターを対象として定性的なスクリーニング基準を用いた環境分類が行われるのに対し、プラス・スタンダードでは重要性の高い特定のセクターを対象として具体的な基準値を用いた環境分類が行われる。
  4. ASEANタクソノミーでは、まだ詳細な分類基準が明確化されておらず、現時点で有効性を評価するのは時期尚早である。但し、ASEANタクソノミーの導入が今後、域内のエネルギー移行を促す可能性や、既存のグリーンボンド及びサステナビリティボンド発行基準の補完を通じてより健全な形でグリーンボンド及びサステナビリティボンド市場の発展につながる可能性等が期待されよう。
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