2022年度地方債計画
-持続可能な財政運営と脱炭素化の両立に向けて-

江夏 あかね

要約

  1. 2022年度地方債計画及び地方財政対策では、税収の伸びや2021年度補正予算による地方交付税の増額分等を通じて臨時財政対策債の発行額が大きく減少し、財政健全化が進むことが明らかになった。そして、公共施設等の適正管理と脱炭素化の取り組み等の推進を始めとして地域課題解決に資する施策が重層的に示され、地方公共団体が行財政運営の持続可能性を確保すべく、国が地方公共団体に良好に関与・支援するスタンスを改めて確認するものとなった。
  2. 2022年度の地方債市場を見据えると、持続可能な財政運営と脱炭素化を始めとした地域課題解決の取り組みをいかに両立させるかが論点になり得る。金融資本市場では近年、持続可能な社会の実現に向けた金融(サステナブルファイナンス)関連の投資需要が伸びており、地域課題解決に向けた財源を持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債で調達する団体が今後も増えることが見込まれる。
  3. SDGs債の発行に当たっては、投資家が着目する可能性のある論点(地域のマテリアリティ〔重要課題〕への焦点、インパクトの追求・開示、追加性の創出)を把握し、適切に対応することが求められる。同時に、(1)金融市場の状況に応じた起債タイミングや年限の選択、商品の多様化といった起債の工夫、(2)投資家向け広報(IR)のさらなる充実化、(3)財政健全性の維持やガバナンスの確保、を意識した行財政運営を行うことが、財政の持続可能性の確保と脱炭素化を始めとした地域課題の解決を両立する上で不可欠と考えられる。
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