500兆円を超えた日本のサステナブル投資残高
-運用手法や資産クラスも多様化-

西山 賢吾

要約

  1. NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が公表した2021年3月末の日本のサステナブル投資残高は514.1兆円となり、前年に比べ65.8%増加した。2020年は新型コロナウイルス感染拡大への懸念から、各国市場で株価が下落した影響を受けたこともあり、残高が減少した。しかし、2021年は各国市場の株価が上昇したのに加え、日本においてサステナブル投資への関心が一段と高まったことから投資残高が拡大した。
  2. 運用手法別のサステナブル投資残高をみると、すべての運用手法で残高が拡大しているが、特に、残高の最も多いESGインテグレーションが前年比で2倍強の増加となった。また、残高はまだ小さいものの、インパクト投資が前年比で5倍増になった。
  3. 資産クラス別のサステナブル投資残高をみると、債券の残高が前年に比べ68.2%増となった。通常の債券投資からESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた投資へと変化していることや、債券投資におけるエンゲージメント活動が活発化してきたことも投資残高拡大の背景にあると考えられる。また、プライベート・エクイティの残高が約3.7倍増加したのが目立った。
  4. 今回の調査対象となった運用機関の運用資産残高に占めるサステナブル投資残高の割合は、2020年の51.6%から、2021年には61.5%に拡大している。さらに、残高の対名目GDP比でみても米国や欧州を上回る水準となっており、日本においてサステナブル投資は定着したといえよう。運用手法ではインパクト投資、資産クラスではプライベート・エクイティが拡大するなど、サステナブル投資が多様化してきたことも今回の調査では明らかになった。環境や社会課題への関心がさらに高まりを見せる中では、日本のサステナブル投資の拡大は継続すると考える。
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