個人投資家への漸進的な浸透が続くESG、ESG投資
-若年層に向けたアプローチは課題-

西山 賢吾

要約

  1. 野村證券が実施した、我が国の個人投資家に対するESG(環境、社会、ガバナンス)、ESG投資に関するアンケート調査(2021年12月公表)の結果を見ると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響など、いわゆる「コロナ禍」を受け、『ESG投資を重視するようになった』と回答が、前回(2020年12月調査)の約3割を上回り、約4割に達した。
  2. ESG関連金融商品への関心についての質問では、『環境に配慮した企業に積極投資をする投資信託』や『グリーンボンド』など、環境関連金融商品への関心がこれまで以上に高まる傾向が見られた。一方、『ESGに関連した金融商品に関心はない』との回答割合は継続的に減少しており、2021年12月調査では4割を下回った。
  3. 企業のESGへの取り組みに対する質問では、過去の調査結果から大きな変化は見られず、過半が「関心がある」で、「関心がない」は約4割程度となった。また、ESG投資と投資収益率に関する質問では、『投資収益率が重要ではあるが、ESG要因もある程度考慮する必要がある』との回答が継続的に上昇し、2021年12月調査では51.2%に達した。投資リターンとESG要因の考慮とのバランスを重視する個人投資家が増えていることがうかがえる。
  4. これらの結果から見ると、我が国の個人投資家に対するESG、ESG投資は漸進的に浸透していると考えられる。しかし、(1)個人投資家へのさらなるESG、ESG投資の訴求や認知度の向上の余地があると考えられる点、(2)ESG投資に対する関心を高める点、そして、(3)証券投資を長期的な資産形成の手段として意識してもらう点は引き続き重要な課題であろう。さらに、社会的な課題解決への効用が高いと考えられる若年層が中心となる時代に向けた、金融業界のアプローチや、その在り方についても真摯な議論が必要と考える。
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