ジェンダー関連金融と日本のサステナビリティ課題解決に向けた論点

江夏 あかね、植田 剛将

要約

  1. ドイツのベルテルスマン財団等による国ごとの「持続可能な開発目標(SDGs)」の進捗情報の2021年版に基づくと、日本の場合、主として、環境分野、ジェンダー、不平等の是正等の項目で達成に向けた努力が一層必要な状況となっている。
  2. ジェンダーとは、社会的・文化的に形成される男女の差異を指すが、世界各地で不平等が指摘されている。ジェンダー不平等の是正は、より豊かで持続可能な世界の実現のための一助ともなり得るため、各ステークホルダーが金融資本市場も通じた取り組みを続けている。
  3. ジェンダー平等の実現に向けた金融(ジェンダー関連金融)は、ジェンダーボンド、ファンド、ベンチャーキャピタル等を通じて、2010年代頃から本格的に投資額が伸び始め、新型コロナウイルス感染症問題も相まって2020年に入ってさらに拡大が続いているとみられる。日本でも2012年度から始まった「なでしこ銘柄」の選定など、金融面でジェンダー平等の実現を後押しするさまざまな取り組みが行われている。
  4. 日本の人口動態や経済状況に鑑みると、金融面も通じてジェンダー平等の実現に向けて着実に進捗を続けることが、中長期にわたって国としての持続可能性を確保するために不可欠と言える。日本のジェンダー関連金融において今後注目され得る論点としては、主に(1)ジェンダー関連金融商品の多様化、(2)ジェンダー関連金融の有効性を示すデータや実証分析の蓄積、(3)サステナビリティ課題全体への複眼的なアプローチ、が挙げられる。
Nomuraレポートダウンロード
サステナビリティについてのお問い合わせ
メディアギャラリー