人工知能(AI)技術を活用するESG評価の現状と課題

富永 健司

要約

  1. 近年、人工知能(AI)に関連する技術(AI技術)の進展に伴い、資産運用におけるAI技術の活用が進んでいる。昨今拡大が続いている環境・社会・ガバナンス(ESG)投資においても、企業のESGに関連する取り組みを評価するESG評価の分野でAI技術が活用されている。
  2. AI技術を活用するESG評価機関としては、スイスを本拠としてESG評価・データを提供するRepRisk、米金融情報大手であるファクトセット(FactSet)傘下のTruvalue Labs、資産運用事業を中核としてサステナビリティ金融事業を推進するアラベスク・グループでドイツを本拠としてESG評価事業を行うアラベスクS-Ray、等が挙げられる。
  3. 伝統的なESG評価と比較したAI技術を活用するESG評価の特徴として、(1)評価の担い手、(2)更新頻度、(3)主な情報ソース、等についての違いがある。AI技術を活用するESG評価については、評価のプロセスにおいてアナリスト等の関与が総じて少なく、メディアニュース等の情報を比較的迅速に反映する特徴があることから、特に情報の信頼性・適切性の確保が重要となると考えられる。
  4. 他方、ESG評価におけるAI技術の活用は、企業のサステナビリティに関する慣行及び行動について通常すぐには入手・分析しにくいような情報等を明らかにし、グリーンウォッシュ等のリスクを軽減することにつながるとの見方もある。ESG分野におけるAI技術の活用が、企業によるESGに係る取り組みの適切な把握につながり、ESG投資の健全かつ持続的な発展に寄与するのか注目されよう。
Nomuraレポートダウンロード
サステナビリティについてのお問い合わせ
メディアギャラリー