IOSCO報告書に見るESG評価・データの活用及び対話の重要性

富永 健司

要約

  1. 近年拡大している環境・社会・ガバナンス(ESG)投資において活用されているのが、企業のESGに係る取り組みをスコアや格付で評価するESG評価である。ESG評価については、評価間にばらつきが存在していることを踏まえて、市場参加者によるESG評価の特徴及び評価間のばらつきの状況等を把握するためのより積極的な取り組みが重要とされている。
  2. この点に関連して、証券監督者国際機構(IOSCO)は2021年11月に公表したESG評価・データに係る最終報告書(IOSCO報告書)の中で、ESG評価・データ提供機関の規制・監督手法及び内部プロセスに係る内容に加えて、ESG評価・データの活用主体及びESG評価・データ提供機関と企業との対話に係る提言を行った。
  3. IOSCO報告書で言及された、ESG評価・データの活用に係る取り組みとしては、活用主体によるESG評価・データのデューデリジェンス(精査)を通じた信頼性の確保等が挙げられる。また、ESG評価・データ提供機関と企業との対話に係る課題に対する施策として、ESG評価・データの対話、コミュニケーションの方法、情報の要請時期、企業によるレビュー機会の内容を含む「対話規程(Terms of Engagement)」の導入等が示された。
  4. IOSCO報告書により世界的潮流が示され、国内では金融庁が2022年2月に設置を公表した「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」が始動するなど、ESG評価・データ及びESG評価・データ提供機関に係る議論は今後着実に深まっていくものと思われる。最終的には、これらの取り組みがサステナブルファイナンスのさらなる進展につながることが重要であり、その観点からも議論の展開が注目される。
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