注目されるIFRSサステナビリティ開示基準
-TCFDと同等の枠組みに基づく国際的な基準開発の進展-

板津 直孝

要約

  1. 2021年6月11日に施行された「改訂コーポレートガバナンス・コード」では、2022年4月に再編される東京証券取引所プライム市場の上場企業に対して、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)又はそれと同等の枠組みに基づく開示を求めている。気候関連情報開示には、国際的に採用されている枠組みとして「TCFDの提言」がある。同等の枠組みとして第一に挙げられる枠組みは、TCFDも策定を推進している「IFRSサステナビリティ開示基準」であると推察される。同基準のプロトタイプは、2021年11月に公表された。
  2. IFRSサステナビリティ開示基準のプロトタイプには、「サステナビリティ関連財務情報の一般的開示要件のプロトタイプ」と「気候関連開示のプロトタイプ」の2つがある。気候関連開示のプロトタイプは、TCFDの提言を基礎とした気候関連の情報開示に焦点を当て、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)スタンダードを踏まえた産業別の開示要件を設定している。同プロトタイプは、基準設計の観点で、情報開示の根拠として原則主義を採用するTCFDの提言と、細則主義のSASBスタンダードを併せ持つことになる。報告企業は、情報開示の原理・原則の理解を深められるとともに、具体的な開示項目等を確認でき、気候関連の開示基準としては、画期的な設計思想に基づいていると言える。
  3. 金融庁は、IFRSサステナビリティ基準の策定の動きに、官民挙げて積極的に参画するとしている。金融庁金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、2021年9月2日より、TCFDの提言及びIFRSサステナビリティ開示基準に基づいた、有価証券報告書でのサステナビリティ情報の法定開示義務について検討を進めている。
  4. プライム市場で求められる気候関連の情報開示では、TCFDの提言に加えて、各国が注目するIFRSサステナビリティ開示基準の策定動向を注視することが重要である。
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