不平等の是正に向けた取り組みと金融
-日本におけるSDGsの目標10の達成に向けて-

江夏 あかね、加藤 貴大

要約

  1. ドイツのベルテルスマン財団等による国ごとの「持続可能な開発目標(SDGs)」の進捗情報の2021年版に基づくと、日本の場合、主として、環境分野、ジェンダーとともに、不平等の是正(目標10「人や国の不平等をなくそう」)について達成に向けた努力が一層必要な状況となっている。
  2. 日本の不平等の状況について、全人口を対象としたジニ係数等の水準はG7諸国の中で遜色ないものの、高齢者、ひとり親世帯等、属性に応じた所得格差は引き続き注視し、対応を進める必要がある。
  3. 日本の場合、国・地方が不平等の是正に向けて重要な役割を果たしているが、財政の硬直化が進んでいる状況を踏まえると、今後は、(1)税制措置の付与と金融資本市場の活用による民間資金の確保、(2)官民連携、(3)企業等の取り組みの金融面での後押し、が重要になると考えられる。世界では、不平等の是正に資する金融が21世紀も引き続き発展しており、日本でのさらなる活用、課題解決に向けて参考になり得る事例が存在する。
  4. 日本が不平等を是正し、SDGsの目標10の達成、そして持続可能な社会を実現するためには、(1)不平等の是正をめぐる要因や属性に応じたきめ細かなアプローチ、(2)情報開示の拡充を通じた格差の実態の可視化、といった論点が注目される。
Nomuraレポートダウンロード
サステナビリティについてのお問い合わせ
メディアギャラリー