我が国上場企業の株式持ち合い状況(2020年度)
-緩やかな持ち合い解消、政策保有株式削減の動きが続く-

西山 賢吾

要約

  1. 野村資本市場研究所で算出した2020年度の「株式持ち合い比率」は前年度比で2年連続低下し、過去最低水準を更新した。保有主体別にみると、上場事業法人、上場銀行、保険会社とも株式保有比率は低下しており、持ち合い解消、政策保有株式削減は業種を問わず進んだ。これに加え、東京証券取引所の市場改革に伴い、上場基準の一つである流通株式の定義が見直されることになったことも、この動きを促進した。
  2. 今後の株式持ち合い、政策保有株式の動向を見る上で重要なものの一つとして、政策保有株式保有水準の議決権行使基準への反映がある。2021年の株主総会より議決権行使助言会社のグラス・ルイスが採用した結果、同社が分析対象とする企業の約9%で経営トップの取締役選任議案に反対した。2022年の株主総会からは議決権行使助言会社のISSや、一部の機関投資家でこうした基準を採用する動きがある。ただし、利用データ等の問題もあり議決権行使基準に導入する動きは限定的と考えられるため、政策保有株式が機関投資家企業間のエンゲージメントテーマとして取り上げられる機会はさらに増えるであろう。
  3. 政策保有株式への見方は機関投資家によって異なるものの、「株式持ち合い比率」が過去最低水準にまで低下している状況下で企業にとって重要なことは、不断に株式の保有意義や合理性の検証を行ってその結果を投資家に対し明確に説明し、投資家の理解を求めていくことである。そうした過程において、保有意義の薄れた持ち合いや政策保有株式を削減する動きは当面緩やかに継続すると考えられる。
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