2022年議決権行使の注目点
-「プライム市場」と「サステナビリティ課題」への対応が中心-

西山 賢吾

要約

  1. 2022年以降の議決権行使における主な注目点は、2022年4月に開設された東京証券取引所のプライム市場上場企業に対する高水準のコーポレートガバナンスへの要請と、環境や社会を中心とした「サステナビリティ課題」に対する議決権行使上の対応と考えられる。
  2. プライム市場上場企業への対応としては、「社外取締役の数を全取締役の3分の1以上、支配株主の存在する場合は過半」とする助言方針や基準改定があるが、さらなるガバナンス水準の底上げを意図し、その対象範囲を全ての上場企業とする事例も一定数ある。
  3. サステナビリティ課題への対応については、パリ協定や、TCFD(気候変動財務情報開示タスクフォース)提言、温室効果ガス排出量といった、国際的なイニシアティブに沿った活動の履行を求め、それらが不十分である場合には社長等経営トップの取締役選任議案に反対する、という基準を採用する動きも進んでいる。
  4. その他、ジェンダー関連や政策保有株式の保有量に関する議決権行使基準の設定も見られている。サステナビリティ課題も含め、従来これらは議決権行使にはなじみにくい「エンゲージメントの重要テーマ」であった。これを議決権行使基準に取り入れて、「エンゲージメントの場で対応を促し、取り組みが不十分であったり、改善が見られない場合は議決権行使に反映」させることで双方の利点を効果的に活かし、企業に対し機関投資家の意思を明確に示すとともに、相互理解を深める狙いがあると考えることができる。
  5. 2022年6月開催の総会では、株主総会資料の電子提供制度創設に関する定款変更議案が多くの企業で出されるであろう。また、「バーチャル株主総会」を可能する定款変更議案も一定数上程されようが、開催条件が限定されていない場合には反対が多くなる可能性がある。
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