ネットゼロの達成に向けて発展するグリーン国債
-英国の個人向けグリーン国債の事例-

江夏 あかね、富永 健司

要約

  1. 世界では2016年12月のポーランドを始めとしてグリーン国債を発行する国が増える中、英国がグリーン国債として、2021年9月にグリーンギルト(Green Gilts)、同年10月には世界初となる個人向けグリーン国債としてグリーン貯蓄国債(Green Savings Bonds)の発行を開始した。
  2. グリーン貯蓄国債は、グリーンギルトと共通のグリーンファイナンス・フレームワークに基づき発行されているが、英国財務省がグリーンギルトを発行するのに対し、国民貯蓄投資機構(NS&I)がグリーン貯蓄国債を発行している。グリーン貯蓄国債は2022年3月末時点で、2021年10月と2022年2月の2回発行されている。
  3. 英国によるグリーン貯蓄国債は、同国政府にとって、(1)満期保有を前提とした安定的な投資家としての個人投資家への訴求、(2)貯蓄者への投資手段の1つとなり得る金融商品の提供、(3)国民に対する同国の気候変動対策のPR、といった意義があると言える。
  4. 個人向けグリーン国債については、英国のグリーン貯蓄国債のトラックレコードに加え、世界的に温室効果ガス排出量実質ゼロ(ネットゼロ)を目指す機運もあり、他国・地域でも続く可能性があると言える。今後、国にとって個人向けグリーン国債が効果的な資金調達手段となるための主な論点としては、(1)他のグリーン関連金融商品との差別化、(2)個人に向けたわかりやすい情報開示、(3)自国の気候変動対策への関心を高めるための工夫、が挙げられる。
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