見えない価値を可視化する
-第4回 ガバナンス「G」:「サステナビリティを含めたガバナンスの可視化とは」-

野村インベスター・リレーションズ(野村資本市場研究所 野村サステナビリティ研究センター 客員研究員)佐原 珠美

要約

  1. 本稿では、サステナビリティ(環境・社会・ガバナンス〔ESG〕要素を含む中長期的な持続可能性)を含めたコーポレート・ガバナンスの開示の在り方について考察する。
  2. コーポレート・ガバナンスを開示する際、上場企業はコーポレートガバナンス・コード(「CGコード」)の各原則に対してコンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明)が求められる。そのため、環境、社会の取り組みや戦略の開示とは異なり、企業が自社の意思やメッセージを発信しにくく、形式的な開示になりがちである。
  3. 2021年6月のCGコード改訂に伴い、サステナビリティについてより幅広い開示が企業に求められるようになった。多くの企業が試行錯誤するなか、サステナビリティを経営の中核に据え、企業理念、パーパス、重要課題(マテリアリティ)など、企業の中核にサステナビリティの概念を織り込もうとしている企業も現れてきた。そうした企業はサステナビリティについて重視する考え方や価値観を軸に、コーポレート・ガバナンス体制や仕組みも構築されている。また、サステナビリティの各課題についても、そのぶれない考え方を軸に一貫して説明されている。
  4. 上記を踏まえ、サステナビリティを含めたガバナンスを説明する際は、(1)自社がサステナビリティにおいて何を重視するかを明確にしたうえで基本方針の策定と体制の構築がなされていること、(2)サステナビリティの各課題を経営層が理解し、経営判断ができる仕組みが将来の見通しも含め構築されていること、(3)サステナビリティにおいて重視することを軸にサステナビリティの各課題が一貫して説明されていること、が重要である。
  5. サステナビリティで重視する点を軸に、現在も将来も、環境変化によってぶれない経営体制であることを発信できれば、自社の本質的なサステナビリティがステークホルダーに理解され、共感を得ることができるだろう。
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