香港のカーボンニュートラルへの取り組みと個人向けグリーン政府債

富永 健司

要約

  1. 世界で拡大するグリーンボンド市場において、昨今、グリーン国債の発行件数が増えている。最近の注目すべき事例として、英国が個人向けグリーン国債を発行する等、個人投資家向けにグリーン国債を発行する動きが挙げられる。英国の発行に続き、香港特別行政区(香港)が2022年5月、個人向けグリーン政府債を200億香港ドル発行した。
  2. 香港政府は、2050年までのカーボンニュートラル達成のために各種環境施策を進めると共に、グリーン及びサステナブルファイナンスの市場発展を支援している。同政府は、こうした取り組みの一環として、グリーン政府債の2019年及び2021年の発行を経て、2022年5月の個人向けグリーン政府債を発行するに至った。香港政府が発行した個人向けグリーン政府債に対する投資需要は旺盛であり、発行額は当初目標額の150億香港ドルから200億香港ドルへと増額された。
  3. 香港のグリーンボンド市場においては2021年、(1)グリーンボンド等の発行及び外部レビュー費用に対して補助金を提供する制度であるグリーン及びサステナブルファイナンス補助スキームの導入、(2)グリーン政府債の発行、等を背景として発行が比較的大きく拡大した。
  4. 今後、グリーン政府債の発行を含む各種施策が、民間企業を含めたグリーンボンドの発行及び市場の継続的な発展につながっていくのか、そして最終的に香港のカーボンニュートラルの達成に寄与するかが注目される。また、香港政府の一連の取り組みは、香港の地域的及び国際的なグリーンファイナンスのハブとしての地位強化にも貢献するものと考えられる。
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