生物多様性の視点を投資判断に統合することを目指す取組み
-オランダの大手資産運用会社ロベコの事例-

林 宏美

要約

  1. オランダの大手資産運用会社であるロベコは、2022年1月31日、「生物多様性に対するロベコのアプローチ(Robeco's approach to biodiversity)」と題する白書を公表し、自然関連リスクおよび機会という観点をロベコの投資判断に導入する取組みについてロードマップを示した。ロベコは、最終的な目標として、(1)投資先の個別企業レベルでの生物多様性関連エクスポージャーの計測、(2)ポートフォリオにおける量的目標の設定、(3)生物多様性の投資戦略の導入を掲げている。
  2. ロベコは、2022年1月に世界自然保護基金オランダ(WWF-NL)と提携し、(1)生物多様性ロードマップにおける協働、(2)生物多様性の視点に投資する運用戦略の共同開発、(3)金融セクターの他のステークホルダーへの働きかけを通じた、投資判断に生物多様性ファクターを盛り込む行動の促進、の3点を目指す方針を打ち出した。
  3. ロベコは、生物多様性関連リスクの高い投資先企業へのエンゲージメントなど自社単独の取組みに加えて、生物多様性のためのファイナンス協定(FBP)をはじめとしたグローバルなイニシアティブに創設時から参画するなど、生物多様性に対して積極的に取り組んできた。
  4. ロベコは、2022年には高リスクの業種に属する個別企業の生物多様性に関するパフォーマンスを評価できるよう、より詳細な分析を実施する方針である。一方で、生物多様性のインパクトや依存度合いは同一企業内でも事業展開する場所によって大幅に異なることも珍しくないことから、仮に関連データを計測できたとしても企業全体としての評価をどうするのか、など金融セクターにとっての課題も少なくない。
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