「真のESG投資」に資するESG投資戦略の明確化
-ESG統合フレームワークの活用によるESG統合の深化への期待-

富永 健司

要約

  1. 昨今、ESG投資を行う運用会社に対して、ESG投資を見せかける行為に対する規制当局の監視が強化されている。例えば、米証券取引委員会(SEC)は2022年5月、米大手銀行のバンクオブニューヨーク(BNY)メロン傘下のBNYメロン・インベストメントアドバイザーに対して、同社が管理運用するESG関連の投資信託における虚偽表示及び記載漏れを理由に150万ドルの制裁金を課した。こうした動きに関連して、ESG投資を行う運用会社にとって、ESG投資戦略を明確化する重要性が高まっている。
  2. ESG投資戦略の明確化においては、投資残高が大きく、多様な実務慣行が存在するESGインテグレーション(ESG統合)の重要性が高いと推察される。CFA協会及び責任投資原則(PRI)事務局は2018年及び2019年に、市場関係者がESG統合の手法を分析・特定する際に参照できる、ESG統合フレームワーク(ESG Integration Framework)の開発を公表した。
  3. 同フレームワークは、ESG統合手法を、(1)リサーチレベル、(2)証券レベル、(3)ポートフォリオレベル、に分類するものである。ESG統合フレームワークの特徴としては、(1)具体的な事例に基づいた粒度の細かい(詳細な)フレームワークであること、(2)投資分析プロセスに基づいた視点が含まれていること、等が挙げられる。
  4. 欧米の運用会社3社のESG統合を含むESG投資の取り組み事例を見ると、リサーチ及びポートフォリオレベルを中心とした幅広いESG統合が実施されているようである。今後、ESG統合の取り組みの深化と理解度向上が、運用会社のESG投資戦略の明確化を促し、ESG投資を行う投資家の裾野の更なる拡大につながると共に、見せかけではない「真のESG投資」の発展に寄与することが期待される。
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