クリエイティブ・エコノミーへのインパクト投資
-文化芸術団体による新たな資金調達手段-

竹下 智

要約

  1. 先進諸国の経済政策において、文化・芸術分野を「クリエイティブ・エコノミー」「クリエイティブ産業」などととらえ、同分野の振興を図る動きが拡がっている。雇用創出などの経済効果だけでなく、コミュニティや人材教育などに対するインパクトの重要性が高まっていることがその理由と考えられる。
  2. リエイティブ・エコノミーへの資金提供において、ファンドを通じたインパクト投資の事例がみられるようになってきた。公的資金(助成金/補助金)や寄付以外の資金を原資としている点、アーティストや関連団体に無担保で返済条件が柔軟なローンを提供する点が特長である。クリエイティブ・エコノミーへのインパクト投資においては、継続的に事業収入・利益を出し続ける事業やプロジェクトを選別する「目利き」としての役割と、事業の持続をサポートするコーチ/メンターとしての機能が重要となる。
  3. 英国・米国のインパクト・ファンドの事例においては、事業収益だけでなく社会的および芸術的なインパクトを計測する評価体系や、信用補完によって投資家のリスクを調整する仕組みなどが試みられている。
  4. 日本においても、アートによる経済効果および社会問題解決への貢献に対する認識が拡がってきている。今後、公的資金への依存が難しくなると予想されるなか、資本市場(直接金融)の活用を検討すべきではないだろうか。
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