米国のベネフィット・コーポレーション
-社会的課題の解決を後押しする企業形態-

橋口 達

要約

  1. 内閣府は2022年6月7日、いわゆる「骨太の方針」を閣議決定した。そこでは、ベネフィット・コーポレーションのような、民間で公的役割を担う新たな法人形態の必要性の有無について検討することが示された。ベネフィット・コーポレーションとは、米国の営利企業形態の一つであり、ビジネスの意思決定において、経済的利益の追求だけでなくステークホルダーへの影響も配慮することが要求される企業である。
  2. 米国において、2010年10月から2017年12月までの間に、少なくとも7,704社がベネフィット・コーポレーションの法人格を取得した。企業がベネフィット・コーポレーションになる理由としては、会社の価値観を継続することや、人材の獲得、ブランド認知度の向上等が挙げられる。
  3. デラウェア州法に基づくベネフィット・コーポレーションは、パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)と呼ばれる。PBCに対する投資額は増加傾向にあり、投資額の上位を占める投資家の多くは利益追求型の伝統的なベンチャー・キャピタルであった。しかし、上場しているPBCの過半は赤字企業であり、好調とは言い難い株価推移が続いている。
  4. 米国のベネフィット・コーポレーションが拡大している背景の一つには、社会的課題の解決に向けた機運に加え、ベンチャー・ファイナンスが充実していることが挙げられる。日本においては、社会的起業家を育成・支援する観点からも、非上場市場にリスクマネーを呼び込むための積極的な制度改革が期待される。
Nomuraレポートダウンロード
サステナビリティについてのお問い合わせ
メディアギャラリー