新しい資本主義と社会的ファイナンス
-社会的課題の解決を図る新たな金融モデルの推進-

小立 敬

要約

  1. 2022年6月、岸田政権の経済政策である「新しい資本主義」の実現に向けて「実行計画」が閣議決定された。実行計画は、社会的課題を解決する経済社会システムの構築を目標に掲げ、社会的課題の解決に焦点を当てる社会的企業のファイナンスを担う新たな金融モデルとして「社会的ファイナンス」を推進する方針を示した。
  2. 社会的ファイナンスは、ESGやSDGsが世界的な課題となる中で、グローバルに成長している。その成長のきっかけとなったのが、2008年のグローバル金融危機である。金融危機以降、金融セクターは健全な社会の構築に向けてより大きな貢献が求められるようになった。その結果、諸外国では社会的ファイナンスが政策的に推進されている。
  3. 社会的ファイナンス市場の発展にとっての根本的課題として、一般に共有されている社会的ファイナンスの定義がないことが挙げられる。もっとも、社会的インパクトを有する経済活動を特定するアプローチは複雑であり、定義の調和や共有化は難しい作業となるだろう。また、社会的ファイナンス市場の発展には、エコシステムを構築することも重要である。
  4. 今後、「新しい資本主義実現会議」において実行計画で示された方向に沿って社会的ファイナンスの推進に関する具体的な検討が進められていくことが想定される。日本における社会的ファイナンスの発展のために、定義の調和やエコシステムの構築という課題にも目を向けながら検討を進めていくことが求められよう。
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