持続可能な社会の実現の一助となり得るインパクト加重会計

江夏 あかね

要約

  1. 持続可能な社会の実現に向けた金融(サステナブルファイナンス)や環境・社会・ガバナンス(ESG)投資において、通常のファイナンスにない特有の要素として、環境面・社会面への効果を意味する「インパクト」が注目を集めている。伝統的な財務会計では、非財務的な価値であるインパクトを可視化することを想定していないが、財務的側面から可視化すべく主要な研究を進めているのが、米国のハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のジョージ・セラフェイム教授が中心となって2019年に立ち上げたインパクト加重会計イニシアチブ(Impact-Weighted Accounts Initiatives、IWAI)である。
  2. IWAIが提唱するインパクト加重会計は、インパクトを金銭的な価値に置き換え、財務諸表に反映させることを意図するものである。IWAIは、2019年の研究開始以降、インパクト加重会計の全般及び各要素(雇用、製品、環境)の考え方や実証分析等、さまざまなアプローチで研究を進めてきた。
  3. 世界でさまざまな環境・社会課題が存在する中、企業、投資家も含めた全てのステークホルダーがインパクトを意識した行動をとることは、持続可能な社会の実現に向けて不可欠であり、インパクト加重会計は持続可能な社会への道筋を描く一助になり得ると考えられる。
  4. インパクト加重会計が将来的に産業界や金融市場で幅広く活用されるためには、IWAIと企業や投資家等のインパクト加重会計の潜在的利用者とのさらなる連携が重要と考えられる。同時に、実証研究の蓄積、研究結果の検証と継続的な手法の改善等を通じて、インパクト・ウォッシュ(若しくはインパクト・ウォッシング)を回避することも、同会計が幅広い利用者の信認を得る上で重要と言える。
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