人的資本情報開示の近況
-法定開示化の進展と任意開示の深化-

西山 賢吾

要約

  1. 人的資本投資は岸田政権下における「新しい資本主義」実現の重要な鍵であり、その「可視化」や「比較可能性」への関心が高まっている。このような状況下で、人的資本情報の開示議論が進められている。
  2. 人的資本などの「非財務情報」は任意開示が基本であったが、法定開示化の動きが進んできた。日本における人的資本情報に関する議論では、有価証券報告書への「人材育成方針」や「社内環境整備方針」の記載をはじめとした(法定)開示ルールが2022年中にも策定される方向である。海外でも、例えば米国では2020年に上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されている。
  3. 「人材版伊藤レポート2.0」にも示されているように、人的資本経営を本当の意味で実現させていくには、「経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するか」と、「情報をどう可視化し、投資家に伝えていくか」の両輪での取り組みが重要となる。
  4. 人的資本情報は「情報の可視化、投資家への伝達」と関係する。企業は開示議論の高まりを人的資本経営構築の好機と捉え、今後、法定開示情報と統合報告書などの任意開示情報を併用して、人的資本への投資がいかに企業価値に結びつくかについて丁寧に説明していく必要性が高まる。そして、投資家などステークホルダーとの対話(エンゲージメント)を通じ、自社の人的資本経営、人材戦略への理解と支持を得ることが求められてくるであろう。
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