IFRSサステナビリティ開示基準の策定動向
-公開草案で具体化された開示要件-

板津 直孝

要約

  1. 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2022年3月、気候変動及びサステナビリティに関する「IFRSサステナビリティ開示基準」の公開草案を公表した。公開草案は、「サステナビリティ関連財務情報開示の全般的要求事項」、「気候関連開示」及び「産業別開示要求」から構成されている。気候関連開示は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を基礎とした気候関連のリスク及び機会に焦点を当て、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)スタンダードに基づく産業別開示要求を設定している。開示媒体は一般目的財務報告としているため、日本では有価証券報告書などによる財務報告が該当する。
  2. 気候関連開示の特徴的な要件としては、気候関連のシナリオ分析を使用することができない場合には代替的な方法の使用を認めている点が挙げられる。温室効果ガス排出量の開示では、TCFDの提言とは異なり、重要性の原則とは独立して、スコープ1、2、3のすべての排出範囲の開示を求めている。これは、全般的要求事項において、開示対象となる事業活動の範囲を企業のバリューチェーン全体としていることによる。スコープ3排出量の計算は依然として精緻化の途上にあることから、現時点では企業に対して重い開示負担になる可能性がある。
  3. 一般目的財務報告を開示媒体とする公開草案では、サステナビリティ関連財務情報の一般目的財務諸表との結合性が重要になる。企業は、一般目的財務報告の利用者が、持続可能性に関連するさまざまなリスク及び機会の関連性を評価し、これらのリスクと機会に関する情報が一般目的財務諸表の情報とどのように結合しているかを、評価できるような情報を提供することに留意する必要がある。
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