野村證券アナリストの目を通した日本企業のESG対応
-環境を中心に事業機会と捉える前向きな動きも広がる-

野村證券エクイティ・リサーチ部 ESGチームヘッド 若生 寿一

要約

  1. 2021年6月のコーポレートガバナンス(CG)・コード改訂などが後押しとなる形で、日本企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)対応の着実な進展が求められている。しかし、企業のESG対応を測定することは難しく、またESG対応が各企業にとって事業機会を捉えるものとなっているのか、コストアップに止まるものなのかを見極めることも難しい。そのため、野村證券では、主要企業を分析するアナリストの主観を近似的な手法として活用することとし、年2回サーベイを実施している。
  2. ロシア・ウクライナ紛争を受けて国際的なサプライチェーンが混乱、物価上昇圧力が高まる中で2022年5月に実施したサーベイによれば、調査時点でのESGへの取り組みはネガティブな影響を受けていないという結果となった。特に先行きについてはESGへの取り組みが順調に進展するという見方が強く、足元でおそらく足踏みしている温室効果ガス排出削減などを再び軌道に乗せようという意欲が見られる。ただし、今後の情勢次第ではこうした判断が悪化する可能性がある点には留意が必要である。
  3. ESG対応の現状判断としては、進展はしているものの積極的な評価には至らない、という見方が続いている。特にG(ガバナンス)については、E(環境)、S(社会)と比べると相対的に遅れているという見方になっている。とはいえ、CGコード改訂を受けて、セクター内での対応の広がりも観察されており、今度の進展が注目される。
  4. 企業のESG対応が事業機会を捉えようとするものか否か、という点については、Eを中心に前向きな回答が徐々に増えている。ESG対応が単なる課題解決ということではなく、将来を見据えた投資であるべきだという考え方が徐々に浸透してきている可能性がある。野村證券では、こうした動きを確認しながら、日本企業の企業価値向上に向けた努力を評価していく方針である。
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