脱炭素社会におけるコーポレート・ファイナンス戦略
-事業ポートフォリオ・マネジメント、脱炭素投資の例示-

野村證券金融工学研究センター クオンツ・ソリューション・リサーチ部 ストラテジック・ソリューション・グループリーダー 杉下 裕樹

要約

  1. 温室効果ガス(GHG)多排出セクターの代表例に鉄鋼業がある。弊社の鉄鋼セクターアナリストは、一部銘柄で目標株価算定にGHG排出量の多寡を織り込んでいる。鉄鋼セクター以外でも、GHG多排出企業の株価がディスカウントされている傾向が統計的に確認される。
  2. GHG排出量の多寡が企業価値に与える影響は、「売上高当りGHG排出量の差」を源泉としていると考えられる。脱炭素社会における企業価値評価フレームワークとして、本指標を利用した手法を提案する。
  3. 脱炭素社会における企業価値フレームワークにおける特有のパラメータとして、GHG排出量ベンチマークと炭素価格があり、それぞれの設定方法について論じる。特に炭素価格については、複数の参照価格例を示す。
  4. 脱炭素社会におけるコーポレート・ファイナンス戦略として、脱炭素投下資本収益率(脱炭素ROIC)を用いた事業ポートフォリオ・マネジメント手法を示す。本手法を利用することにより、GHG排出量削減と資本コストを意識した事業投資の実行・撤退を議論することが可能になる。
  5. またカーボンニュートラル早期対応メリットを定量化することによる脱炭素投資戦略を示す。早期達成メリットを企業価値の一部として定量化することで、企業価値向上のための脱炭素投資予算額の設定の妥当性評価が可能になる。
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