「新質生産力」の発展を目指す中国
ーカギとなる先端技術と産業の融合ー

関 志雄

要約

  1. 習近平総書記が提唱する「新質生産力」とは、従来の経済成長モデルから脱却し、革新(イノベーション)が主導的役割を果たし、高度な技術、高効率、高品質という特徴を備えた先進的な生産力の形態を指す。中国において、新質生産力を向上させることは、持続可能な発展を実現し、厳しさを増す内外環境の変化に対応するための重要な手段として位置付けられている。
  2. 新質生産力を高める原動力は、科学技術革新、産業の高度化、生産要素の質と配置の改善と、三者の相乗作用である。中国は、科学技術革新を加速すべく、挙国体制の下で、科学技術の自立自強を目指しており、特に独創的で破壊的なイノベーションの創出に注力している。また、産業高度化に向けて、先端技術を生かした旧来産業の改造・レベルアップと新興産業・未来産業の育成に加え、サプライチェーンの強化とデジタル経済の推進に取り組んでいる。さらに、生産要素の質と配置の改善のために、生産要素の流動化を促す市場化改革と、教育・科学技術・人材の三位一体改革に加え、新しい生産要素としての「データ」の活用を進めている。
  3. 新質生産力の発展を反映して、中国は科学技術大国として浮上し、産業の高度化とグリーン転換も進展している。その一方で、米中デカップリングの影響や、挙国体制の限界、ベンチャー企業への資金提供の不足など、克服しなければならない課題も多い。これらの課題を解決するためには、市場化改革と対外開放の推進や、法治と私有財産の保護の強化などの制度改革を通じて、ビジネス環境の改善に努めなければならない。
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