欧州監督機構が公表したSFDRの改正に向けた提言
ー「サステナブル」と「トランジション」商品カテゴリーの創設ー
富永 健司
要約
- 欧州連合(EU)の金融監督を担う欧州監督機構(ESAs)は2024年6月、欧州委員会(EC)宛のサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の改正に向けた提言を公表した。EUでは、SFDRが2021年3月に施行された後、ECのメイリード・マクギネス委員(金融サービス・金融安定・資本市場同盟担当)が2022年12月に規則の改正について言及し、ECがSFDRの見直しに向けた動きを進めてきた。
- ESAsによる提言におけるSFDRの主要な提案の一つとして、金融商品に関してサステナブル及びトランジションという新たな分類カテゴリーの創設が挙げられる。これは、金融商品の開示規則であるSFDRが、実質的に金融商品のラベリングの枠組みとして利用されてきたことを受けたものであり、サステナビリティの特徴を示す新たな分類カテゴリーの導入が、利用者の理解度の向上に資するとの見方が示されている。
- ESAsによる今回の提言においては、新たな金融商品の分類カテゴリーにおける具体的な基準等の詳細は示されていない。なお、SFDRの改正についての具体的なスケジュールについては公表されていないが、ECは現状、SFDRの実施に関するステークホルダーの意見を基に、新たな仕組みの詳細を検討しているとみられる。今後、ESAsによる提言を受けて、ECがSFDRの見直しをどのように具現化していくのかが注目される。
- EUのサステナブルファイナンスで、相応の存在感を有するSFDRが見直されることを通じて、今後、欧州におけるサステナブルファイナンスの金融商品、同ファイナンスに関わる金融市場参加者の取り組みがどのように変貌していくのか目が離せない。