親子上場の状況(2023年度末):随所に「潮目の変化」
ー親子上場企業数200社割れ、親会社の持分減少が解消の主要因にー

西山 賢吾

要約

  1. 野村資本市場研究所が調査した2023年度末(2024年3月末)時点での日本の親子上場企業(親会社も上場企業である企業)数は190社となり、17年連続で前年度末比の純減となった。また、親子上場企業数が200社を下回ったのは1993年度末以来30年ぶりである。
  2. 今回特に注目されるのは親子上場の減少要因である。これまで(データを遡及できる2008年度末以降)は、親会社による上場子会社の完全子会社化が親子上場の減少要因として最も多かった。しかし、2023年度末は、親会社の株式保有の減少により親子関係に該当しなくなる事例が初めて最も多くなった。他の上場会社やファンドへの売却を通じた企業グループによる価値向上策など、従来より多様な施策がとられるようになってきた証左と考えられる。さらには、親会社による売却に際し、当初想定していた企業(グループ)ではなく、いわゆる「同意なき買収提案」側企業に売却する事例も見られるなど、親子上場を取り巻く環境の随所に潮目の変化が見られるようになってきたことも特筆される。
  3. 現状の親子上場を巡る議論としては、2000年代後半を中心に見られたような「親子上場の禁止ないしは規制」議論ではなく、少数株主保護を観点ベースにしたグループ経営における親子上場の意義や重要性、体制整備と、それらに関する情報開示の拡充で対応することが基本的な考えとなっている。親子上場を見る株主や投資家の「目」が厳しくなるとともに、日本の企業グループにとって、国際的な競争力とその存在感を高めることは喫緊の課題であることから親子上場の見直し、純減は今後も継続が見込まれる。これとともに、グループ経営戦略の観点から、これまで以上に親子上場の戦略的な活用も併せて期待される。
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