地域間格差が顕在化するサステナブルファイナンス
ー欧米日におけるSDGs債の発行状況を中心にー
江夏 あかね
要約
- 世界のサステナブルファイナンスは、2020年代に入って、金利水準の変化、地政学リスク、政治的反発等を背景に、国・地域間で格差が顕在化している。
- 世界における持続可能な開発(SDGs)に資する債券(SDGs債)の国・地域別で見た2023年の発行額は、欧州、米国ともに、2021年のピークに比してそれぞれ約22%減、約33%減となった。欧州では信頼性(credibility)向上を目指す取り組みと新型コロナウイルス感染症問題への対応の収束、米国では政治や規制・監視面からの逆風が発行額停滞の背景にある。一方、日本については、政府支援策も背景として、2023年の発行額が2021年比約81%増と、堅調に増加した。
- 欧州、米国と日本のSDGs債の発行傾向は対照的だが、サステナブルファイナンスにおいて信頼性や質の確保が重要と認識され、取り組みが進められていることが共通点として挙げられる。
- サステナブルファイナンスが本質を追求する段階に入る中、SDGs債が信頼性と質を確保するためには、(1)同債券を通じてどの程度インパクトが創出されたかを計測、(2)透明性及び比較可能性を確保した上で投資家を始めとしたステークホルダーに情報開示、(3)投資家等とのエンゲージメントも通じて、環境・社会インパクトが確実に創出されているかを検証、(4)発行体の次のサステナビリティ関連のアクションにいかす、といった、個々の発行体や投資家の取り組みが大切と言える。