中国における上場会社のサステナビリティ強制開示規制の導入

宋 良也

要約

  1. 中国の上海・深圳・北京証券取引所は2024年4月12日、「上場会社自主規制指針ーサステナビリティ報告(試行)」(以降、サステナビリティ開示規則)を各々公表した。同規則は、中国にて初めて導入された上場会社のサステナビリティ強制開示規制であり、2025年12月31日に終了する会計年度から適用し始め、強制開示が適用される上場会社は2026年4月末時点までにサステナビリティ報告を開示する必要がある。
  2. 中国では従来、上場会社のサステナビリティ開示に関する統一的な基準がなかった。各当局はそれぞれ個別の規則を制定していたものの、具体性に欠けていたほか、定量的な開示要件が規定されていない等の課題があった。今般のサステナビリティ開示規則は、これらの課題を解決することを目的としている。
  3. サステナビリティ開示規則の下では、合計450社超の上場会社がサステナビリティ強制開示の対象となる。環境・社会・ガバナンス(ESG)の各分野における開示項目(トピック)では、国際的なサステナビリティに関する基準に共通する部分が多い一方、「農村の振興」といった中国特有なトピックも設けられている。また、上場会社は各トピックに対し、財務的マテリアリティとインパクトマテリアリティのどちらに特定できるかを判断し、財務的マテリアリティに特定された場合は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言の最終報告書での開示フレームワークに沿って開示しなければならない。
  4. 今後、中国におけるESG情報の強制開示は、上場会社のみならず、一般企業にも適用される予定となっており、当局が関連規則を制定中である。中国財政部は、一般企業にも適用するサステナビリティ開示規則のパブリックコメント募集を開始した。将来的には、サステナビリティ開示の義務化が徐々に広まるにつれ、サステナビリティ開示を早期から行い、開示内容が適切かつ充実している上場会社が、投資家に選好される可能性も考えられる。投資家のスタンスの変化も含めて、中国企業におけるサステナビリティ開示の動向は注目に値しよう。
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