社債市場におけるSDGs債の歴史・現状と課題
富永 健司
要約
- 国内の社債市場において、調達資金が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債は、発行の裾野が着実に広がっており、2023年度の発行額は約2.8兆円、社債の発行額全体に占めるSDGs債の割合は2割超に達した。
- 日本の社債市場におけるSDGs債は、2010年代後半に環境省の発行支援策の後押し等も背景に、グリーンボンドを中心に発行規模が拡大した。2020年代に入って、日本政府による重層的な支援を受けながら、トランジションボンドの発行実績が増えつつある。
- 社債市場においてSDGs債の発行拡大が進む中、(1)社債発行に占めるSDGs債の割合の上昇、(2)業種及び発行体の多様化、が進展している。中長期的な観点から、SDGs債による資金調達ニーズ、SDGs債の対象プロジェクトの広がり、一般社債対比の発行条件等を踏まえた、企業によるSDGs債の発行に向けたさらなる取り組みが注目される。
- 今後のSDGs債を含む社債市場を見据えると、国内外の金融政策、主要各国における選挙、地政学リスク等により、先行きを見通すのが困難な状況にあると言える。このような状況も踏まえた上で、SDGs債の市場発展に資する論点としては、(1)投資家層の拡大に向けた取り組み、(2)インパクトレポーティングの比較可能性の向上、が挙げられる。発行体がこれらの取り組みを進めることを通じて、日本のSDGs債市場全体がさらに活性化することが期待される。