ブラックロックによるトランジション上場投資信託(ETF)の導入
-トランジション・ファイナンスにおける2つの意義-
富永 健司
要約
- 米国を本拠とする世界最大級の資産運用会社であるブラックロックは2024年6月、脱炭素社会への移行(トランジション)における投資機会を提供する5本の上場投資信託(トランジションETF)を欧州で設定・導入した。同社は、トランジション投資を「脱炭素経済への移行に対応し( "Preparing for" )、ネットゼロに整合し( "Aligned to" )、移行により創出される事業機会からの恩恵を受け( "Benefiting from" )、そして移行に寄与すること( "Contributing to" )に焦点を当てる投資」と定義し、トランジション関連の商品提供を強化している
- これらのETFは、将来的な温室効果ガス排出削減の取り組みに関する指標として、信頼性の高い排出削減目標を有するかということを銘柄選定基準に組み込むことで、トランジションに関連する企業への投資機会を提供している。
- トランジションETFに関連する意義として、(1)トランジション投資における評価軸の提示、(2)トランジション・ファイナンスにおける投資の選択肢の拡大、が挙げられる。
- 今後、トランジションETFの導入により、トランジション投資における評価軸の検討が進むことで投資家の裾野が拡大していくのか、そしてトランジション・ファイナンスにおける投資の選択肢の拡大が、中長期的に企業の資金調達の幅を広げ、トランジションに向けた事業の促進につながっていくのか、さらにこれらの動きが脱炭素社会の実現へ寄与していくのか注目される。