改めて注目されるコミュニティ開発金融機関(CDFI)
-米国におけるブレンデッド・ファイナンス-
小立 敬
要約
- 米国では、十分なサービスを受けていないコミュニティに投資や融資を提供するコミュニティ開発金融機関(CDFI)という民間金融機関が存在する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として、多くの政府資金がCDFIを通じて供給されたことから、改めて注目を集めている。
- CDFIは、政府機関であるCDFIファンドが提示する適格要件を満たす金融機関が申請し、認定される仕組みである。CDFIファンドが提供するプログラムの下、CDFIは金融支援(助成金)や技術支援を受けることが可能であり、CDFIファンドは、助成金に対して民間投融資によってレバレッジをかけることをCDFIに求めている。
- CDFIには、銀行やクレジット・ユニオン(信用組合)という預金取扱機関に加えて、ローン・ファンドやベンチャー・キャピタルといったノンバンク金融仲介機関もあり、ビジネスモデルは多様である一方、コミュニティ開発や金融包摂のための投融資を実行するというミッションが根底にあるミッション主導型の金融機関である。
- 米国のコミュニティ開発金融は、CDFIを含むミッション主導型金融機関、CDFIファンドを含む政府機関や地方政府、財団、機関投資家、預金取扱機関、さらに民間企業といったリスク許容度の異なる様々な市場参加者の参加によって成立しており、結果としてブレンデッド・ファイナンスによって多様な資本階層が構築されている。
- 日本の金融機関には地方創生やサステナブル・ファイナンスの推進が要請されているが、米国のコミュニティ開発金融が示唆することは、ブレンデッド・ファイナンスの活用がそのような社会的課題の解決に寄与する可能性があるということではないだろうか。