脱炭素社会につながるグリーンエクイティの可能性
-証券取引所と発行体による挑戦-
江夏 あかね
要約
- 環境課題を解決するための金融(グリーンファイナンス)は21世紀に入って、債券やローンといった債務(デット)を中心に発展してきたが、2020年代に入った頃から株式(エクイティ)に関して徐々に取り組みが見られるようになっている。
- 本稿では、(1)グリーンな活動に取り組みかつ一定の要件を満たす企業の株式をグリーンエクイティ等の名称で指定する仕組みを実施する証券取引所(ナスダック・ノルディック及びブラジルのサンパウロ証券取引所〔B3〕)、(2)グリーンエクイティ、サステナビリティ・リンク転換社債(SLCB)、グリーンCB、グリーン社債型種類株式といった手法を通じてグリーンエクイティ関連の資金調達を行った企業(日本プロロジスリート投資法人、イタリアの石油・ガス大手のエニ〔Eni〕及び日本のインフロニア・ホールディングス)、による取り組みを概観した。
- 発行体にとっては、グリーンエクイティ指定やグリーンエクイティ関連金融手法による資金調達を通じて(1)資金調達手段の多様化、(2)インパクト投資家や個人投資家も含めた投資家層の拡大、(3)(金融市場環境にもよるものの)資金調達コストの低減、(4)投資家等のステークホルダーへの安心感の醸成、等のメリットが期待される。
- グリーンエクイティが金融資本市場に広まっていくための論点としては、(1)グリーンデット(グリーンボンド等)と同水準以上の信頼性の確保、(2)グリーンも含めた成長戦略の展開、が挙げられる。