「従業員サーベイ」をサーベイする
-有報開示から従業員を活かす「本気度」を探る-

西山 賢吾

要約

  1. 人的資本経営に対する関心が高まる中、主役となる「人・従業員」の声を人事・経営全般に役立てることを目的に、彼らに対し包括的なアンケート調査「従業員サーベイ」を行う企業を目にする機会が増えている。一方、2023年3月期の有価証券報告書(以下、有報)より人的資本に関する開示が義務化された。法定開示書類である有報では、企業が重要と考える諸点を、簡潔、かつ分かりやすく記述することが肝要である。よって、有報での「従業員サーベイ」に関する記述には、従業員を活かす経営に対する企業の「本気度」が現れると見られる。
  2. このような問題意識の下で、Russell/Nomura Large Cap構成企業(300社)の最新の有報から、各社の従業員サーベイに関する記述を調査した。記述のあった188社を見ると、サーベイの手法が多岐にわたるため、調査結果の企業間比較はかなり難しいことが分かった。さらに、サーベイのKPI(重要達成度指標)の意味や算出方法等に触れていない企業が多いことや、統合報告書など任意開示情報とのすみ分けが十分とは言えない企業も見られるなど、開示に関する課題は少なくない。
  3. その一方で、サーベイの結果を役員報酬を決める項目として採用する企業や、サーベイで浮き彫りになった諸課題及びそれへの対応などについて、図表等を交え利用者に分かりやすい形で説明する企業も見られるなど、「本気度」の伝わる有用な情報が得られることも分かった。企業価値向上の源泉となる人的資本の観点から、従業員サーベイ並びにその結果に関する有報での情報開示の有用性、及び注目度は今後さらに高まるであろう。
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