人的資本経営・開示の「要諦」
-経営戦略と人材戦略との連動、実践そして可視化-

西山 賢吾

要約

  1. 「新しい資本主義」の重要施策として人的資本投資が取り上げられた。時代の急速な変化に加え、日本では少子高齢化の問題もあり、競争力や企業価値の源泉となる人材を確保するかが企業の大きな課題であり、人的資本の投資に対する注目が高まっている。
  2. こうした課題への施策として人的資本経営がある。人的資本経営は、経営理念や存在意義(パーパス)をベースとして、将来ありたい姿と現在の姿とのギャップの把握と解消に向け経営戦略/人事戦略を遂行する。そして、遂行結果に関するステークホルダー(利害関係者)とのエンゲージメントや自己評価を踏まえブラッシュアップした戦略を改めて遂行するという一連の循環である。
  3. 従業員の企業への帰属意識やロイヤリティを高めること、そして国が進める「資産運用立国」への支援になることから、人材戦略における施策の一つとして「自社株式保有の奨励」を「金融経済教育」とセットで従業員に提供することは検討に値するであろう。
  4. 人的資本経営と人的資本の開示(可視化)はいわば「車の両輪」である。人的資本開示のキーワードは、「法定開示化の進展と任意開示の深化」であり、「規定演技」である「法定開示」をベースに、いかに「自由演技」である「任意開示」の部分で各企業の独自性を出すかが問われる。
  5. 人的資本への関心と人的資本の開示議論の高まりは人的資本経営構築の好機である。積極的な情報開示、及び投資家などステークホルダーとの対話(エンゲージメント)を通じて説明し、自社の人的資本経営に対し理解と支持を得ることが非常に重要と考える。
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