米アマゾンの従業員向けファイナンシャル・ウェルネス支援策
中村 美江奈
要約
- 日本企業においては、昨今、人的資本経営への取り組みが求められる中、従業員のファイナンシャル・ウェルネスも1つの重要な要素として注目され始めている。米国では既に、従業員のファイナンシャル・ウェルネスは雇用主が一定の責任を負うとの認識の下、多くの雇用主が積極的にファイナンシャル・ウェルネスの支援を行っており、ケーススタディとして参照する余地は大いにあると思われる。
- 米国では、ファイナンシャル・ウェルネス支援策を提供するものの利用率が低いといった問題点も指摘されはじめており、いかにして従業員に利用してもらうかが次の課題となっている。その観点から、アマゾンは興味深い取り組みを行っている。
- アマゾンは従前より従業員のファイナンシャル・ウェルネス支援に注力してきたが、2023年、新たに「ブライトサイド・ファイナンシャル・ケア」と称するサービスの提供を開始した。その際、あらかじめ従業員のニーズを調査し、それに応えたサービス内容にすることや、サービスの手厚さに定評のあるプロバイダー選定などに注力したのが特徴的だった。また、アマゾンは社内外のステークホルダーに向けて、定量的な成果の情報発信も行っている。
- 大手企業は多様な従業員を擁し、その置かれた環境やニーズも様々である。ファイナンシャル・ウェルネス支援策も、その対象や内容については優先順位付けを行う必要がある。今般のアマゾンのように、最も経済的困窮に陥っている従業員を対象にした支援策が、従業員の満足度やロイヤリティ、生産性の向上、ひいては企業価値向上に寄与するのか、今後注目される。