AIウォッシングへの監督と金融市場による対応
-米FINRAが示す規制対応に関する検討事項を中心に-

富永 健司

要約

  1. 米国の金融規制当局は近年、人工知能(AI)を活用しているように見せかけて、顧客を勧誘する行為(AIウォッシング)に対する監視を強めてきた。例えば、米国証券取引委員会(SEC)は2024年3月、AIの活用に関して虚偽で誤解を招く説明をしたとして投資顧問業者のデルフィア及びグローバル・プレディクションズを告発した。
  2. 生成AIの活用の進展とAIウォッシングに対する監督強化の流れを受けて、米国における証券会社の自主規制機関であるFINRA(金融取引業規制機構)は2024年6月、会員証券会社に対して、AI関連のアプリケーション導入時における、規制対応に関する検討事項を周知した(規制通知)。FINRAの規制通知は、AI関連のアプリケーションを導入する際に、(1)モデル・リスク管理、(2)データガバナンス、(3)顧客のプライバシー、(4)監督統制システム、等に関連する規制上の義務について遵守を促す内容となっている。
  3. SECは、2025年1月20日に第2次トランプ政権が発足するタイミングで、ゲイリー・ゲンスラー委員長の辞任を公表しており、AIウォッシングに対するSECの監督が今後どのように展開していくかは現時点では見通すことが困難な状況である。他方、AIウォッシングに関連する取り組みは、米国だけではなく国際的にも進展が見られる。
  4. 国内では金融庁が、データに基づいたより高度な金融サービスの提供や、生成AIを含むAIを活用したモデルの利用が進む中で、その活用に伴って生じるモデル・リスク管理態勢の高度化を金融機関に促している。AIの普及に伴い、金融市場でモデル・リスク管理等への対応が進展することで、AIの活用に関する透明性と信頼性が向上していくのか注目される。
Nomuraレポートダウンロード
サステナビリティについてのお問い合わせ
メディアギャラリー