21世紀の地方債市場の持続可能性
-地方公共団体の主要財源の安定調達に向けて-
江夏 あかね
要約
- 21世紀の地方債市場は、市場公募化が進展する中で、金融政策を始めとして金融市場全般の動きの影響も受けたが、地方債の安全性を守る仕組み、地方債関連制度の進化、各地方公共団体による地方債の安定消化を意識した取り組み等を背景に、総じて安定して推移した。
- 地方財政は、財政の硬直化傾向はあるものの、地方公共団体の財政健全化努力や国からの財政移転にも下支えされ、改善傾向が確認された。ただし、今後の地方財政の持続可能性を考えると、厳しい国の財政状況、地方公共団体の厳しい財政運営の舵取り等の課題を抱えていることが明らかになった。
- 今後も、地方公共団体にとって地方債が重要な財源の1つである状況は不変と想定され、地方債市場から安定的に資金調達が行えるとともに、同市場の持続可能性が維持されることが大切なのは言うまでもない。そのための主な論点としては、(1)資金調達コスト低減に向けた取り組み、(2)臨時財政対策債のさらなる縮減、(3)減債基金の効率的な運用、が挙げられる。
- 特に、2001年度に創設された臨時財政対策債は、2025年度地方債計画において、2025年度の発行額が制度が始まって以来初となるゼロとされた。地方財政の健全性の観点から評価されるものの、発行残高(2025年度末見込み、約42兆円)を踏まえると、フローの発行額とともに、ストックの発行残高についてもさらに縮減していくことが求められる。