公的セクター向けの気候関連開示基準の公開草案
-国際公会計基準審議会(IPSASB)による世界初の取り組み-
江夏 あかね
要約
- 国際公会計基準審議会(IPSASB)は2024年10月31日、世界初の公的セクター向けの気候関連開示基準の公開草案を公表した。公開草案では、民間セクター向けの国際的なサステナビリティ開示基準(気候関連財務情報開示タスクフォース〔TCFD〕の提言や国際サステナビリティ基準審議会〔ISSB〕による気候関連開示基準)を基に国等の公的セクター特有の要素等を踏まえて策定された開示枠組みが示された。同基準は、早ければ2025年下半期に最終化予定だが、民間投資家にとっても馴染みのある構成となっている上、比較可能性が担保されていることも踏まえると、投資判断等において活用しやすい形になると想定される。
- 世界では今後、IPSASBによる気候関連開示基準に基づき情報開示を進める国が増えると想定される。例えば、2024年9月末時点で持続可能な開発目標(SDGs)に資する債券(ソブリンSDGs債)を発行している55カ国のうち、国際公会計基準(IPSAS)を意識した基準で財務報告を行っている国は、2020年時点で全体の約半分にあたる29カ国、2025年には6割超に当たる34カ国となる予定である。
- IPSASBによる気候関連開示基準に基づく情報開示を行うのは、既にIPSASを意識した基準で財務報告を行っている国が中心となると見込まれるが、公開草案ではIPSASに基づく財務報告を実施していない国でも適用することができるとしている。日本も含めたIPSASを採用していない国も、気候関連開示基準の内容や各国の適用状況の把握をした上で、適切に情報開示を進めていくことが、投資家の信認を得て、SDGs債等も通じた資金調達の安定性を確保する上でのカギになると考えられる。