気候関連の機会を可視化する「グリーンイネーブリング」の概念
-ICMAのガイダンスとファイナンス事例-
江夏 あかね
要約
- グリーンイネーブリングプロジェクト(GEP)とは、グリーンプロジェクトのバリューチェーン(VC)で重要な役割を果たすが、それ自体は明確なグリーンという訳ではないものを指す。国際資本市場協会(ICMA)は2024年6月、GEPガイダンスを公表した。
- GEPガイダンスは、(1)クライテリアにおける4つの要件、最終用途の透明性、追加ガイダンスにおける3項目といった構成、(2)EUタクソノミー等の考慮、(3)グリーンボンド原則(GBP)との整合性の確保、等、資金調達主体にとって使いやすさを意識した内容となっている。同ガイダンスの公表以降、国内外でGEPを資金使途とした資金調達事例が見られ始めている。
- 今後、発行体がGEPガイダンスを活用して新たに資金調達に取り組むケースや、既にグリーンファイナンスに取り組んでいる発行体がGEPガイダンスにも適合する形でフレームワークを更新し、資金使途をGEPと明示した形で起債を行うケースが増える可能性がある。
- GEPがサステナブルファイナンス市場に浸透していくための論点としては、(1)ステークホルダーによる周知に向けた努力、(2)信頼性の確保、(3)企業による経営への反映、が挙げられる。特に、3点目について、GEPは、気候関連の機会を可視化するものである。ファイナンスも通じて、企業が自社を取り巻く気候関連リスクのみならず機会もしっかりと把握し、より効果的な経営に活かしていくといった流れができれば、GEPに関するファイナンスの増加にもつながり得ると考えられる。