中国のグリーンボンド及びトランジションボンド向けの新規則
-発行支援策と情報開示の強化を含むメカニズムの整備-

宋 良也

要約

  1. 中国の銀行間市場取引商協会は2024年10月10日に、中国人民銀行の管理監督下の銀行間債券市場で発行されるグリーンボンド及びトランジションボンドの発行支援策及び情報開示の強化を含むメカニズムの整備に関する新規則を公布した。同規則は、グリーンボンド及びトランジションボンドを同時に適用対象とする初めての規則となっている。
  2. 中国におけるグリーンボンドの発行額は、2023年以降は減少傾向にある。また、トランジションボンド市場は試験運用が始まって間もないことから、規模がまだ小さく、中国国内のグリーンボンド市場と比べて存在感が大きくない。今般の新規則は、グリーンボンド及びトランジションボンドの低迷状況から脱却し、発行を後押しすることが意図されているとみられる。
  3. 新規則は、(1)グリーンボンド及びトランジションボンドの発行支援策、(2)投資家の利益を考慮した情報開示の強化、の2つの分野の内容が含まれる。そのうち(1)では、グリーンボンド及びトランジションボンドの調達資金使途の緩和や発行要件の緩和策が挙げられる。(2)では、グリーンボンドの登録・発行段階における情報開示要件を緩和することで、発行の効率性を向上させると同時に、存続期間の情報開示を強化することで、グリーンボンドに対する投資家の理解を深め、より合理的な投資判断を促進させることが狙いとして挙げられる。
  4. 中国のグリーンボンド市場は、これまで海外投資家に受け入れられていない可能性が否めない。また、トランジション・ファイナンスに関する全国レベルの基準が制定されていない等の課題もある。今後、中国におけるグリーン・トランジション分野の規則改正は、国際的な基準との整合性をとり、更なる対外開放を進めていく必要があろう。その動きは、同分野に注力する他国の政策制定機関にとっても示唆となり得ることから、注目に値しよう。
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